PFV賞 2022受賞パーティー
さて、今回は私がお仕事で携わるPFVのプロジェクト、PFV賞について少しお話ししたいと思います。
PFV賞、(家族は持続可能性の代弁者)の発足は世界中がパンデミックに見舞われた2020年です。PFVメンバーはこの厳しい時代、家族経営こそが持続可能性を代弁すると確信し、世界中の家族経営企業をサポートしていくことで、持続可能な世の中を可能にするという信念のもと、この賞が設立されました。PFV賞の目的は、あらゆる分野の家族経営企業をサポートしていくことです。この賞は2年毎に授与され、企業の開発プロジェクトを支援する為に10万ユーロの小切手が贈られます。第二の目的としては、卓越性を促進し、次世代継承や社会的責任、革新の重要さを強調することです。
私も、PFVよりこの賞に相応しい日本の家族経営企業を推薦するという任務を頂き、PFV Prize の日本のコーディネーターとして現在活動させて頂いています。
毎回、世界中からご応募頂いた企業の中から始めに5ファイナリストを選考し、その中から最終的に一社のみ受賞者が選ばれます。初年度の受賞者はヨーロッパで最も古い弦楽器メーカーであるベルギーのメゾン・ベルナールで、ストラディバリウスも修復しています。
嬉しいことに、日本からもこれまで2度、5ファイナリストとして日本の家族経営企業がノミネートされました。初年度は、鹿児島県の15代続く窯元、沈壽官さんhttp://www.chin-jukan.co.jp/introduction.htmlが選ばれ、翌年には京都の4代続く漆製作会社、堤漆店さんhttps://www.kourin-urushi.com/が選ばれています。沈壽官さんは、私の実家の宮崎県のお隣でもあり、祖母や母からこの窯元の、豊臣秀吉の時代に纏わる悲しい歴史などを聞いていたので、5ファイナリストに選ばれた時は個人的にとても嬉しかったです。堤漆店さんは、漆の製作をしながら、漆産業を守る為に森の植樹活動も熱心にされていて、地域活性化に非常に貢献されています。伝統を守りつつ、漆のサーフボードを作成したりと、新たなアイデアを取り入れている姿がとても印象的でした。
そして、前回の受賞者は、フランスのプロヴァンス地方、リール・シュール・ラ・ソルグで高級繊維製造会社を営む、8世代続くブリュン・ド・ヴィアン・ティラン家。
今年の4月に南フランスで受賞パーティが開かれ、私も参加してきたので、その様子を以下にご紹介したいと思います。
PFV賞の受賞パーティーは毎回、受賞した家族とPFVファミリーとの合同で開催されます。今年のパーティー会場初日はブリュン・ド・ヴィアン・ティラン家がホスト。イベント初日、ブリュン・ド・ヴィアン・ティランに続々とPFV代表メンバーが到着し、1階のブティックでシャンパン、ポルロジェを片手に、ブリュン家のメンバーとのアペリティフがスタート。その後、オーナー、ジャン・ルイ・ ブリュン氏案内の元、繊維工場の歴史や作品が飾られた美術館を訪問し、そのまま近くのレストランにてディナーへ。
翌日は朝から、ジャン・ルイ氏による繊維工場のプライベートツアー。一つ一つの作品の素材や製作方法など、それぞれの作品に対する熱い思いを、とても丁寧に説明していただきました。ジャン・ルイ氏の作品に対する熱い思いを伝える姿は、ワイン生産者がワイン作りに対する哲学を語る姿と重なり、職業は違っても物作りに対する情熱はどの世界にも共通するのだな、と感じました。
その後バスで授賞パーティー会場へ移動。ホストはPFVのペラン家。レストランのお庭からはジゴンダスの葡萄畑が一望でき、初夏の爽やかな日差しの元、ポルロジェを片手に生演奏が流れるアペリティフは、とても華やかなものでした。
その後いよいよ授賞式が始まります。PFV会長のマチュー・ペラン氏によるスピーチを皮切りに、PFV代表それぞれのメンバーが、続々とブリュン家へお祝いの言葉を送ります。高級羊毛の作品と、ワイン作りに共通する思いを合わせ、皆とても綺麗にメッセージにまとめていました。以下、それぞれのメンバーの言葉をご紹介します。
*PFV会長のマチュー・ペラン氏, フランス・コート・デュ・ローヌ、ペラン家
次世代にバトンを渡すことは家族経営の企業にとって非常に重要なこと。私たちは皆、自分たちを所有者としてではなく、受け継ぐ者として見ています。私たちは、遺産を永続させ、未来を築くためにできることを貢献します。
*ジュリアン・ド・ボーマルシェ氏 / フランス・ボルドー, バロン・フィリップ・ド・ロートシルト
羊毛とワインの関係は、セミヨンのグラスに含まれるラノリンの香りに限定され、一筋縄ではいかないと思う人もいるかもしれませんが、ムートン・ロートシルトには確かに「ムートン」が存在します。とジョークを飛ばしていました。
*ピエール・ブリュン氏 / (ジャン・ルイ・ブリュン氏の父)
ブリュン・ド・ヴィアン・ティランはこの混合のプロセスを「メランジェ」とは呼ばず、ワイン醸造用語の「アッサンブラージュ」を選んでいる。ワインが瓶詰めの前に欠点をチェックするのと同じように、工場で製造されるスカーフやショールの1枚1枚にも、同じようなアプローチが厳密に適用される。そして、高級ワインのように、ブリュン・ド・ヴィアン・ティランの製品は寿命が長いと言われています: 「私たちの生地は60年以上使えるんです」。
*ジャン・ルイ・ブリュン氏
私たちのファミリービジネスの価値は、ブランドや機会によって左右されるものではなく、文化によって左右されるものです。時間は私たちに逆らう敵ではなく、文化を築くための友です。
レストランの会場内、テーブルセッティングも、ワイングラスとワイン、ブリュン家の高級羊毛を用いた作品が見事に混ざり合い、まさにアッサンブラージュされてとても美しいものでした。
改めて、私もこの素晴らしいプロジェクトに携われて、光栄だなと感じています。
幸運にも、私のテーブルの隣には初回のPFV賞を受賞した、ヨーロッパで最も古い弦楽器メーカー、ベルギーのメゾン・ベルナールの親子がご一緒でした。お父さまより、私の大好きなバイオリニスト、諏訪内晶子さんのストラディヴァリウスの修理担当されてることを聞きとても嬉しかったです。
PFV賞2024の応募も先月よりいよいよ開始しました。
日本には100年企業が2万5000社あり、その9割をファミリービジネスが占めています。そのうちの3900社強は200年企業、1000年以上継続している「超長寿企業」が21社もある、正に超長寿企業大国であるので、世界的にもとても注目されている国です。私も、日本からも素晴らしい家族経営企業がこの賞に選ばれることを心から祈っています。将来、受賞した日本の家族経営企業とPFVのメンバーが親交を深め、互いの家族の伝統や哲学、将来の革新的なアイデアなど、様々な意見を交換する場を持てる、素晴らしいきっかけとなれることを祈っています。2024年のPFV賞、日本の皆様のご推薦や沢山の家族経営企業のご応募をお待ちしております。